冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


そこに広がっていたのは咲き誇る薔薇だった。

枯れていたはずの薔薇園が、命を吹き返したように月明かりに照らされていた。風に乗って薔薇の香りがほのかに漂っている。

言葉を失っている様子に、少し不安になって尋ねる。


「気分を悪くされましたか?」

「いや、そうじゃないんだ。ただ驚いて。城に戻ってからも執務室にこもりきりだったから、全く気がつかなかった。これは、ランシュアが?」

「はい。使用人の方々に手伝ってもらって、植え替えたんです。素敵な庭園なのに、枯れたままではかわいそうで」


私が準備していたのは、この薔薇園だ。

荒れ果てていた庭の整備をしようと思ったきっかけは、エルネス大臣から「庭の一角を薔薇園にしたのは、薔薇を好んでいたルイスさんとシャーロットさんの追悼のために先代の王が手配した」と聞いたからである。

レウル様が過去の事件を知った後は、使用人に一切の立ち入りを禁じて全ての薔薇が枯れてしまったそうだが、このまま放っておくなんてできなかった。

革命を忘れまいと建てた石碑も、薔薇に囲まれてどことなく輝いて見える。