冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


一瞬思考が停止した。

くらくらするほど魅惑的な表情。肩が触れるほど距離を詰めた彼は、緩く口角を上げる。


「ふふ。赤くなった」

「そ、それは、陛下が突拍子もないことをおっしゃるから」

「そうか?ごく自然な流れだろう。話をするだけで招き入れるわけがない。それに、こんな夜分に男の部屋に来るなんて、期待しているようなものだ。今までも、色仕掛けをしてきた妃候補はそれなりにいたからな」


指を絡めたまま、それ以上はなにもしてこない。こちらの出方を見ているらしい。

雑用ならいくらでもこなせる自信はあったが、男女のやりとりとなると話は別。確かに、結婚するとなればそれなりに夫婦らしい営みをしなければならないと想定はしていたが、これも命令のひとつなのか?

拒めるわけがない。

そっと手を握り返してみる。受け入れる覚悟は伝わったようだが、この先どうすればいいのか全くわからなかった。


「私を試しているんですか?」

「いや。どちらかというと自分自身を試している方が近いな」


獲物をとらえるような眼差しが心を射抜く。


「俺が、君にそそられるかどうか」