“今夜、城のテラスに来てほしい”
集会から一週間後。
公務で忙しくなったレウル様宛に一文だけしたためた手紙を、エルネス大臣に渡してもらった。
約束の日の夜、カリーヌをはじめとした城のメイドたちに協力してもらい、念入りに肌の手入れをして服と髪飾りを選ぶ。
背中をリボンで編み上げた純白のワンピースに、丁寧に毛先を巻いたハーフアップ。レース素材のバレッタを留めたら完成だ。
薄くリップを塗って鏡を見ると、いつもとは別人に見える。
「あの、カリーヌ。気合いを入れすぎじゃないかしら?」
「それくらいがちょうどいいんですよ。やっとふたりきりでゆっくり過ごせるんですから」
カリーヌやメイド達は本人以上に盛り上がっている様子である。
旗を振る勢いで見送られ、テラスに向かう。
何度か立ち止まって深呼吸をしながら歩くと、待ち合わせ場所の柱に寄りかかる影が見えた。
しまった。仕事に追われていると思っていたのに、先に来ていたのか。
「すみません。お待たせしました」
あわてて駆け寄って声をかけると、ふいっと綺麗な横顔がこちらを向いた。
私を見て一瞬目を丸くしたあと、やがて緩く口角を上げる。
「びっくりした。わざわざおめかししてくれたのか?」
「あ、ええっと、カリーヌ達に手伝ってもらって。変ですか?」
「いや。綺麗だ」


