冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい



“今夜、城のテラスに来てほしい”


集会から一週間後。

公務で忙しくなったレウル様宛に一文だけしたためた手紙を、エルネス大臣に渡してもらった。

約束の日の夜、カリーヌをはじめとした城のメイドたちに協力してもらい、念入りに肌の手入れをして服と髪飾りを選ぶ。

背中をリボンで編み上げた純白のワンピースに、丁寧に毛先を巻いたハーフアップ。レース素材のバレッタを留めたら完成だ。

薄くリップを塗って鏡を見ると、いつもとは別人に見える。


「あの、カリーヌ。気合いを入れすぎじゃないかしら?」

「それくらいがちょうどいいんですよ。やっとふたりきりでゆっくり過ごせるんですから」


カリーヌやメイド達は本人以上に盛り上がっている様子である。

旗を振る勢いで見送られ、テラスに向かう。

何度か立ち止まって深呼吸をしながら歩くと、待ち合わせ場所の柱に寄りかかる影が見えた。

しまった。仕事に追われていると思っていたのに、先に来ていたのか。


「すみません。お待たせしました」


あわてて駆け寄って声をかけると、ふいっと綺麗な横顔がこちらを向いた。

私を見て一瞬目を丸くしたあと、やがて緩く口角を上げる。


「びっくりした。わざわざおめかししてくれたのか?」

「あ、ええっと、カリーヌ達に手伝ってもらって。変ですか?」

「いや。綺麗だ」