冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


まさか、ダルトンさんが二十五年前の未解決事件の首謀者だったなんて。

たしかに、次期王の座を狙っていた彼が犯人ならば、隠し子の存在を知り、シャーロットさんが側室に迎えられる前に始末してしまおうと考えてもおかしくない。

愛人の子は王になれないという常識を覆され、いるはずもない嫡男としてレウル様が王家に引き取られた時は度肝を抜いただろう。

それに、ダルトンさんはアルソートの夜会で初めて会ったときから薔薇酒を差し入れていた。薔薇にトラウマを持つレウル様に精神的なダメージを与えるのが目的だったなら、わざわざあんな土産を選んだ理由もハッキリする。

極めつけは、病院での暴露だ。

ダルトンさんは、本当の父親がルイスさんであると知らなかった。愛人の子であると主張して疑わなかったのは、かつてその目で兄の密会を目撃し、シャーロットさんを殺めた張本人だったからである。

動機は十分。ここまで証拠を揃えられては言い逃れもできまい。

顔を歪めるダルトンさんは、もはや反論する気も失せたようだ。

レウル様は、軽蔑の視線で低く続けた。


「そういえば、ご存知ですか?サメノア国の監獄に入れられたハルトヴィッヒ王が、共犯者にあなたの名前を挙げたそうですよ」

「なんだと?」

「俺を亡き者にして王位についたあかつきに、アルソートの鉱山資源を横流しするという取り引きをしたそうですね。ランシュアの背中の傷も、あなたが情報を売ったんでしょう?」