冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


耳をつんざくような悲鳴。

しかし、振り下ろされた手はギリギリのところで止まっていた。

極度の恐怖にさらされたダルトンさんが目を見開いて顔を上げると、黒い微笑を浮かべた陛下は、ぐしゃりと薔薇の花弁を握りつぶす。

はらはらと落ちる花びら。むせ返るような薔薇の香りが部屋に立ち込め、低い声が響く。


「たかが薔薇の刺で大袈裟な。毒でも仕込まれていると思いましたか?」


ひどく動揺して震えるダルトンさん。

レウル様はその一瞬を見逃さない。


「今の態度で確信が持てました。あなたこそ、俺の母であるシャーロットを薔薇の毒で殺めた張本人ですね?」

「な、なにを言いだすんだ。そんな証拠はどこにもないだろう」


すると、ドレイクさんがクラッチバックから一枚の書類を取り出した。


「証拠なら掴んだぞ。あんたの自宅の庭を調べさせてもらった。薔薇毒事件で使われた毒と同じ成分を含んだ土と枯れた薔薇が見つかったんだ。もちろん、シャーロット家に送られた花束の宛先の筆跡鑑定も済んでいる」