冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい

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一週間後。

執務室の椅子に腰掛けるのは、無事に退院したレウル様だ。その側で、ドレイクさんと私が控えている。

やがてノックの音が響き、部屋に入ってきたのはダルトンさんだった。険しい顔のアスランが、ぴったりと背に付いている。


「こんな厳重に警戒しなくても、逃げも隠れもしませんのに」


そんな小言を垂れた叔父に、レウル様は感情を悟らせない表情を浮かべた。


「わざわざ呼び出してすみません。数分で終わりますので、構えないでください」

「はっ、今さら下手に出なくたってかまいませんよ。私を憎んでいるはずでしょう?」


陛下は、否定も肯定もしない。

数秒の沈黙の後、青い瞳が細まる。


「今日はダルトンさんにお渡ししたいものがあってお呼びしました」

「渡したいものだって?」

「えぇ。……ドレイク。手袋を貸してくれないか」


声をかけられ、ドレイクさんは手につけていた黒手袋をするりと脱いだ。「仰せのままに」と手渡すと、レウル様は器用に肌を隠す。

一体、なにをするつもりなの?