冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


それはなによりも嬉しい言葉だった。

ただの虫よけとして城にいる権利を得たはずの私が陛下に必要とされている未来を、以前は夢にもみなかった。

ずっと生きる意味を探していた。

だけど、そんなもの必要ないんだ。

立ち止まっても背中を押して、転んでも手を差し伸べてくれる人がいれば、共に並んで歩いていける。

きっと私がいなくなれば、私を支えにする彼が暗闇の中で歩けなくなってしまうから。

もう、自分を大切にしない生き方は選ばない。


レウル様も、自分なんて生まれてこなければよかったなんて二度と言わないだろう。

“赤ちゃんの名前は、レウル
生まれてきてくれてありがとう”

エルネス大臣から託された手帳には、望まれて生まれた未来への希望と、どこまでも深い愛情が込められていると気づいたから。


「でも、その前にケジメをつけておかないとな」


低く聞こえた呟き。

きょとんとする私とエルネス大臣は、お互い顔を見合わせる。

陛下は、青い薔薇の異名に相応しい黒い微笑を浮かべた。


「すぐにドレイクを呼んでくれ。任せたい仕事がある」