小さく呼吸をした大臣は、手帳へと視線を落とした。過去を懐かしむように写真を撫で、口を開く。
「レウル陛下が生まれた頃、アルソートは革命が始まったばかりの激動の時代でした。写真の通り、ルイス様は革命軍に所属しておりましたので、国の未来のために戦地へ赴いたのです」
エルネス大臣の話では、革命を終えた後に籍を入れる予定だったそうだ。召集がかかれば、ゆっくり結婚の準備もできなかったのだろう。
「しかし、ルイス様は二度とシャーロット様の前には現れませんでした」
「戦地で命を落としてしまったのですか?」
「えぇ。彼は革命軍の末端の戦士のひとりでしたが、その勇姿は国民誰もが知っているほどの功労者です。ランシュア様もご存知だと思いますよ」
過去を探ったその時、頭の片隅で記憶のカケラが光る。
蘇ったのはアスランの声だ。
『革命の最中、先代の王が拠点にしていた小屋が、反革命軍に囲まれたときがあってな。そんな絶体絶命の状況で、ひとりの戦士が囮をかってでたらしいんだ』
『その後、彼は銃弾を受けて命を落とし、生き延びた先代の王は革命を成した。肩書きも持たない末端の戦士が国の未来を救ったんだ』
「まさか、自分を囮にして先代の王を救った戦士が、ルイスさんだったんですか?」


