開くと、薄茶に変色したページに青インクの文字が並んでいた。綺麗につづられているのは日記だ。
仕事や食事、趣味などの他愛のない話が残されているが、気になったのはよく出てくる“ルイス”という名。
とても親しげで、何度も一緒に出かけている描写がある。指し示す言葉は“彼”であり、“誕生日にワインを飲んだ”などの文から、成人男性のようだ。兄弟や親戚というわけでもないらしい。
「あの、ルイスさんというのは先代の王のお名前でしょうか?」
「いえ、まったくの別人でございます」
エルネス大臣はきっぱりと言い切った。
プライベートを覗き見している罪悪感がありながらも読み進めていると、ある日付の内容に目が止まる。
“急に気持ちが悪くなって、ルイスに病院へ付き添ってもらった
結果は、とても嬉しい知らせ
ルイスはすごく喜んでくれた
母親になるのは不安がいっぱいだけど、ルイスと一緒なら大丈夫”
かすかな違和感を覚えた。
シャーロットさんは、赤ちゃんを身ごもったようだ。日付はちょうど二十五年前。
ここまで、日記の半分ほど読み終わっていたが、先代の王が一度も出てきていない。あえて書いていないのだろうか?
しかし、文字を目で追っていると、信じられない一文が飛び込んできた。


