冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい



開くと、薄茶に変色したページに青インクの文字が並んでいた。綺麗につづられているのは日記だ。

仕事や食事、趣味などの他愛のない話が残されているが、気になったのはよく出てくる“ルイス”という名。

とても親しげで、何度も一緒に出かけている描写がある。指し示す言葉は“彼”であり、“誕生日にワインを飲んだ”などの文から、成人男性のようだ。兄弟や親戚というわけでもないらしい。


「あの、ルイスさんというのは先代の王のお名前でしょうか?」

「いえ、まったくの別人でございます」


エルネス大臣はきっぱりと言い切った。

プライベートを覗き見している罪悪感がありながらも読み進めていると、ある日付の内容に目が止まる。


“急に気持ちが悪くなって、ルイスに病院へ付き添ってもらった

結果は、とても嬉しい知らせ
ルイスはすごく喜んでくれた

母親になるのは不安がいっぱいだけど、ルイスと一緒なら大丈夫”


かすかな違和感を覚えた。

シャーロットさんは、赤ちゃんを身ごもったようだ。日付はちょうど二十五年前。

ここまで、日記の半分ほど読み終わっていたが、先代の王が一度も出てきていない。あえて書いていないのだろうか?

しかし、文字を目で追っていると、信じられない一文が飛び込んできた。