冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


ドクンと胸が鳴る。

隠しごと?

レウル様は落ち着いて言葉の続きを待っていた。エルネス大臣は意を決したように続ける。


「私は出生の秘密を知っておりました。あなたが知る前から……先代の王があなたを引き取った頃から、すべてを見てきたのです」


エルネス大臣は深く頭を下げた。

考えてみれば、大臣は先代の王の時代から仕えてきた。王と王妃が亡くなった今、彼は唯一歴史を目の当たりにしてきた人物だったのだ。

重々しい雰囲気を見守っていると、レウル様は柔らかく口元を緩める。


「わかっているよ。父上に口止めでもされていたんだろう?愛人の子だなんて、軽々しく口にできないし」

「いえ、そうではありません。これをご覧いただけますか?」


大臣が鞄から取り出したのは小さな手帳だった。とても古いようで、革の表紙が色あせている。

首を傾げると、エルネス大臣は静かに続けた。


「それは、レウル陛下の母君、シャーロット様の遺品でございます」


予想外の品に動揺を隠せない。

これが、なにを意味するのだろう?

レウル様が緊張の面持ちで手帳を受け取る。


「中を見ても?」

「はい。私はプライバシーを尊重して拝見しておりませんが、おそらく、お伝えしたい内容がすべて記されていると思います」