冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


包帯の巻かれた腕を見せると、気づかうように優しく撫でられ、思わず息が止まる。

触られるとは思ってなかった。なんだか急に意識してしまう。

伏せ目がちにうつむく綺麗な顔に見惚れていると、小さく尋ねられた。


「どうして素手で薔薇に触れた?こんなに傷がつくまで我慢して」

「それは、使用人の方に仕事を中断させてまで手入れの道具を用意していただくのは申し訳なかったので。少しの痛みは慣れているので気にしませんし」

「痛いものは痛いだろう?どうしてそこまで従順なんだ?人にモノを頼むことすらも遠慮して……草むしりだって名家の令嬢なら嫌悪を抱くだろうに」

「私にとっては嫌な仕事ではありません。しいて言えば、働いている方が落ち着くんです」


断る選択肢はなかった。

妃候補がするとは思えない仕事をふられても、怒ったり嫌がったりしない。自分が役に立っていると感じられるだけで、ここにいていいと思えるからだ。

もしかして陛下は政略結婚を破棄するために、令嬢としてのプライドを傷つけるような仕事をさせて自分を嫌いにならせようとしたのか?

真意に気付き戸惑っていると、深くため息をつかれた。


「君はまるで人形だな。俺との政略結婚も家に命じられて仕方なくここへ来たんだろう?自分の意思はないのか?」