冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい



突き放すような言い方はひどく刺々しい。返事も聞かずに去っていく背中にぞわりと背筋が震える。

まずい。怒らせた。なにが気に障ったのだろう?あの薔薇園に勝手に入ったのがいけなかった?それとも、妃候補として相応しくない格好をしたから?

いつもロイヤルスマイルを浮かべたままだったが、今はにこりともしていなかった。見定め期間は七日しかないのに、たった二日で嫌われるなんて。

不甲斐ない自分に、喉の奥が焼けるように痛んだ。


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日が落ちた午後十一時。

私は陛下の自室の前に立っていた。

薔薇園での一件の後、彼は公務のため馬車に乗って市街へ出ていた。カリーヌからやっと帰宅したと聞き、使用人たちが寝静まった後ナイトウェアのまま部屋を抜け出したのである。

このまま関係を悪くするわけにはいかない。ちゃんと謝罪をしなければ。

部屋の扉を軽く叩いた。じわじわと緊張感が胸に広がる。やがて静かに扉が開き、陛下はこちらの顔を見るなりわずかに目を見開く。


「お疲れのところ申し訳ございません。お話があってまいりました。お時間をいただけないでしょうか?」


あぁ、声が震える。

追い返されるかな。きっと、こんな夜遅くまで仕事をしていたのなら、すぐにでも休みたいはずだ。

数秒の沈黙の後、誰ひとりとしていない廊下にため息が漏れる。


「……わかった。入りなさい」