冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい



突然、嫌悪に尖った声が響いた。

驚いて振り返ると、入り口のアーチの前に立っていたのは血相を変えたクロウィド陛下だ。つかつかと無言で歩み寄るその顔はひどく冷たい。

薔薇園に入り込んだ姿が執務室から見えたのだろうか?わざわざ来るなんて、まさかここに入ってはいけなかった?


「ごめんなさい。草むしりをする場所を探していたら薔薇の芽に気付いて、日が当たるように枯れたツルを取ろうと思いまして」


見上げながら必死に言い訳をすると、彼は手元に視線を落として目を見開いた。やや強引に腕を掴まれる。


「おいで」


有無も言わさず引っ張り上げられた。そのままこちらを見ずに先を歩く足は、まるで恐ろしいものから逃げるように速い。

城に入ると、陛下はカリーヌを呼びつけた。何事かと血相を変えて駆け寄るメイドに指示が飛ぶ。


「カリーヌ。彼女の手当てをしてやってくれ」

「手当てですか!?どこかお怪我を?」

「両腕だ。深くはないけど傷が残ったらまずいだろう」


あわてて救急箱を取りに向かうカリーヌ。すると、クロウィド陛下は役目を終えたと言わんばかりに背を向ける。


「ランシュア。今後、あの薔薇園には近づくな。また怪我をされても迷惑だ」