冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


ビジネスの話は詳しくないが、ここまで断言するなんて、相当悪い条件だったのだろう。よくふたりきりになってまで持ちかけたものだ。

あらゆる不自然な点に眉を寄せていると、レウル様は不安を和らげるように微笑む。


「大丈夫だ、ランシュア。未来を心配して心を痛めるのは良くない。今まで通り、誠実に他国と付き合っていけばトラブルなんてそうそう起きないだろうから」

「まぁ、アルソートは革命前と比べてだいぶ優等生ですからね。恨みを買うような話や裏取引もないですし、杞憂で終わればいいですが」


陛下に続けたドレイクさんの言葉に小さく頷く。


ーーしかし、事件が起きたのは夜会から三日後だった。


「レウル陛下!大変です!」


血相を変えて書斎に駆け込んできたのは、エルネス大臣だ。

資料整理を手伝っていた私の隣で、レウル様が真剣な表情で問う。


「そんなにあわてて、どうした?」

「それが、隣国の商船がアルソートの海域で炎上し、そのまま沈没したとの電報が入ったのです」

「炎上?事故が起きたのか?」

「それが、唯一生き延びた船長が“アルソートの国旗を掲げた船から砲撃を受けた”と主張しているようで」