冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい



どういう理論……!?

わかりやすく動揺する私にくすくすと肩を揺らしたレウル様は、すっかりいつもの調子だ。こちらの反応をみて楽しんでいる?


ーーコンコン

その時、軽く扉がノックされた。


「すみません、陛下。ただいま戻りました」


ハスキーな低い声の主はドレイクさんだ。もしかして、気を利かせて待機していた?

私から手を離したレウル様は穏やかに答える。


「調査ありがとう。会場はどうだった?」

「今はハルトヴィッヒ王が騒ぎをしずめて、平穏な夜会が進んでいます。アルソートへの非難の声はありません。念のため、ストールを回収するついでにメイドに声をかけて、気にしないようフォローをしておきました」

「さすがだな、助かるよ。なにか動きが掴めたんだろう?ゆっくり聞かせてくれ」

「あ、いえ。俺は御者の隣で帰るので。城に戻ってからでも大丈夫ですよ」


“どうぞ続けて”と言わんばかりのセリフ。さりげなく気を使っているようだ。

空気を読まれるのも逆に恥ずかしい。


「ドレイクさん、どうぞ中に!」


陛下を押しのけて馬車の扉を開けると、黒髪オールバックの情報屋は若干気まずそうに視線を逸らしたのだった。