冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


「ごめんなさい。謝るのは私の方です。あんな騒ぎを起こして……どのお詫びの言葉をもっても償いきれません」

「いや、君は悪くない。こうなる事も予想して、全てから君を守るべきだった。全部俺の責任だ」


二人掛けの椅子が軋む。

すっと離れた彼を見上げると、ターコイズブルーの瞳と目があった。


「一体、どうしてあんな騒ぎになった?」

「ストールにクモがついていたんです」

「クモ?」

「はい。驚いて声を上げてしまって、近くにいたメイドがクモを払おうとストールを脱がせて……」


それを聞いたレウル様は、いぶかしげに眉を寄せる。


「なぜクモが服に?外を長く歩いたわけでもあるまいし、会場は清掃が行き届いていてクモの巣もなかった。それに、俺が側にいないタイミングで見つかったのも偶然とは思えない」


言われてみればたしかにそうだ。ゲストを招く会場を清掃していないはずがない。

それに、アルソートで着替えたときも馬車での移動中もクモなんてついていなかった。

もしも元からついていたのなら、例え小さいシルエットだとしても隣に座るレウル様や観察力に優れたドレイクさんが気づかないわけがない。もちろん、動く感触で自分が一番よくわかるだろう。

脳裏にある心当たりがよぎる。