流暢な発音で低く響く声。
それは他でもないレウル様だ。
鋭い視線はぞくりとするほど冷たく、怒りに震えている。誰もが恐れおののく青い薔薇が、威嚇するようにゲスト達を睨みつけた。
やがて、やや強引に体を引き寄せた彼は、ぼそりと呟く。
「帰ろう、ランシュア」
一直線に扉へと向かう足の速度は落ちない。
会場を出てロータリーへと降りる。城の裏手まで来ると、停めてあったのはアルソート国の馬車だ。控えていた御者があわてて扉を開ける。
「すまない。しばらくふたりにしてくれないか」
「か、かしこまりました」
乗り込んで扉が閉まった途端、ぎゅっ!と強く抱きしめられた。勢いのまま座席の背もたれに寄りかかると、ふたりはずるずるとクッションまで腰を下ろす。
「ごめんね」
その声を聞いた瞬間、凍りついていた心が溶けた。
ぽろぽろと涙が溢れる。
どうしてあなたが謝るの?取り返しのつかないことをしたのは私なのに。各国の要人が集まる場で、レウル様に恥にかかせた。アルソートの名前に泥を塗った。
おまけに、彼は私を庇うためにゲスト全員に怒りの矛先を向けたのだ。背中を見て侮辱や軽蔑をした全員を薔薇の刺で貫くように。


