“まずい”
頭の中で危険信号が鳴る。
ここでストールを脱ぐわけにはいかない。なんとかやり過ごさなきゃ。
『いえ、自分でやります。騒がしくして申し訳ございません』
『遠慮なさらないでください。早くしないと、ドレスの中に入ってしまったら大変です!』
メイドが善意でストールに手をかけ、ずるりと肩から布が落ちた。
ドクン!と心臓が鈍く音を立てる。
「だめ……っ!!」
声を出したときにはもう遅かった。
露わになった肩と背中を見たゲスト達は途端に騒ぎだす。
『な、なんだあの肌は』
『あれは、アルソート国の次期王妃?』
『痛々しくて見ていられないわ』
まるでこの世のものではないものを見るかのような視線だ。侮辱の言葉だけははっきりと聞き取れた。
やってしまった。よりによって一番避けなければならない事態を引き起こした。
ストールで隠し切れると思ったのが甘かったのか?そもそもここに来てはいけなかったのか?
私はどこで間違えた?
血の気が引いて頭の中は真っ白。うまくこの場を乗りきる余裕もない。
ふいに肩を抱かれた。
庇うように前に立つ影。ブロンドの髪が視界に映る。
『彼女は見せ物じゃない』


