冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい



“まずい”


頭の中で危険信号が鳴る。

ここでストールを脱ぐわけにはいかない。なんとかやり過ごさなきゃ。


『いえ、自分でやります。騒がしくして申し訳ございません』

『遠慮なさらないでください。早くしないと、ドレスの中に入ってしまったら大変です!』


メイドが善意でストールに手をかけ、ずるりと肩から布が落ちた。

ドクン!と心臓が鈍く音を立てる。


「だめ……っ!!」


声を出したときにはもう遅かった。

露わになった肩と背中を見たゲスト達は途端に騒ぎだす。


『な、なんだあの肌は』

『あれは、アルソート国の次期王妃?』

『痛々しくて見ていられないわ』


まるでこの世のものではないものを見るかのような視線だ。侮辱の言葉だけははっきりと聞き取れた。

やってしまった。よりによって一番避けなければならない事態を引き起こした。

ストールで隠し切れると思ったのが甘かったのか?そもそもここに来てはいけなかったのか?

私はどこで間違えた?

血の気が引いて頭の中は真っ白。うまくこの場を乗りきる余裕もない。


ふいに肩を抱かれた。

庇うように前に立つ影。ブロンドの髪が視界に映る。


『彼女は見せ物じゃない』