冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


ストールに目をつけられたらしい。

一瞬ドキリとしたが、レウル様が素早く肩を抱いた。


『いえ、彼女は大丈夫です。お気遣いありがとうございます』


やや圧のある語気。ビジネスの笑みに隙がないためか、ハルトヴィッヒ王も『そうですか』とあっさり引き下がる。

やり過ごせてよかった。動揺に気づかれなかっただろうか?

むくむくと不安が湧き上がる一方、ハルトヴィッヒ王は平静を保ったまま口を開く。


『レウル王。せっかく我が国にいらっしゃったのですし、よろしければ場所を変えてお話しをしませんか?』


予想外のセリフに、隣に立つ彼はわずかに眉を寄せた。


『この場ではできないような内容なのですか?』

『いえ、怪しい取り引きなどではありませんよ。ただ、堅苦しいビジネスの話ですので、ランシュア様は退屈になってしまうかと思いましてね』


これは建前?

どうも表情からは本心が読めないが、密偵を送り込んだ件と関係があるのだろうか?それとも、本当に夜会のチャンスを大いに活用した外交の話?


「私はここを動かずにいますので、大丈夫ですよ」