冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


ロータリーに降り立つと、ドレイクさんは軽く口角を上げてこちらへ告げた。


「受付を終えたら単独行動させていただきますね。夜会が終わる頃に馬車で落ち合いましょう」


虎視眈々と裏情報を狙っている目が怖い。

「期待してるよ」と頷いたレウル様は、情報屋を見送ったあと優しく私の肩を抱いた。


数分後、目の前には初めて見る光景が広がっていた。

どこを見回しても高い身分だと一目でわかるゲスト達が語らっている。飛び交う言語は公用語で統一されているようで、さすが国際的な社交場といったところか。おのおの立食パーティーを楽しんでいるらしい。

その時、給仕係らしいメイドが歩み寄ってきた。深々と頭を下げ、印象の良い笑みを浮かべる。


『レウル=クロウィド様と、お連れのランシュア様ですね。ようこそお越しくださいました。お飲み物はいかがなさいますか?』

『果実酒をいただくよ。彼女にも同じものを』


公用語に合わせたレウル様は、慣れているように挨拶を交わす。

香り豊かなお酒が注がれた綺麗なグラスが差し出された。口をつけると喉を通る液体はじんわりと熱い。そこまでアルコール度数は高くないようだ。柑橘系の甘い味が気に入ってコクコク飲んでいると、隣からこっそりささやかれた。


「あんまり飲み過ぎてはいけないよ?」

「あっ、すみません。あまりお酒を飲んだ経験がないので珍しくて」

「ふふ。今夜が会談目的の夜会じゃなかったら、ランシュアと心ゆくまでディナーを楽しみたかったんだけどな。次からはミネラルウォーターを頼もうか。君はすぐに火照ってしまうから」