冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


以前の夜会では、国内の催しだった上に他国のゲストを招いた場ではなかったため襟の詰まったドレスで参加できたが、今回はあらゆる国から要人が集まる公式の社交会だ。

年齢や地域のしきたりなどで例外が許される場合もあるが、ドレスコードを守らなくては失礼にあたるし、正式な婚約者となった以上は国の顔に泥を塗らないようにそれなりの振る舞いをしなくてはならない。マナーも知らない小娘だなんて思われても困る。

薄手のストールなら会場内でも羽織れるので、迷惑をかけないように隠し通せるだろう。


「大丈夫です。私の背中はレウル様以外知らないですし、万が一濡れても肌は透けませんので」


渋い顔をしていた彼は、その言葉を聞いてようやく納得したように頷いた。

側で様子を見守っていた大臣とドレイクさんは“背中を見た仲?”と無言で目を合わせている。若干の誤解を招いたようだが、あえて気を使ってくれたようでなにも突っ込んでこない。

やがて四輪馬車へと乗り込み揺られること数時間。窓の外へ目をやると、国境を越えて目的の城が見えた。

白が基調のアルソート城とは違い、黒い柵に囲まれた隣国の城は魔王の居城のようだ。密偵騒ぎがあったため、余計にそう感じる。