誰も何も言わないなか、司会の女性が少し焦ったように、


「な、なんだかこの会場にその女性がいらっしゃるようですね。羨ましいですね、みなさん」


しんとした会場の雰囲気の中、カズくんは静かに続けた。


「陽菜、俺と結婚してください」



会場が静かにどよめく。



…ヒナ、って?



カズくん、何言ってるの?


私はびっくりしすぎて、こちらを見ているカズくんの視線から目が離せなかった。



何、言ってるの…?


私の名前を知ってる人達なのか、何人かの人がこちらをちらちら見ている。


そんななか、ぱっと頭に浮かんだのは、haruの顔で。


私は周りを見渡してharuの姿を探した。



haru。



haru…!



私は会場の端でじっとステージを睨むように見ているharuの姿を捉えた。


視線の先はカズくん?



怒ってるような、でも悲しそうな目をしながら、瞬きもしないで。



ううん、


カズくんを見てるんじゃない。見てるけど見てない。