きっと橘くんが誤解を解いてくれるだろう。
私が否定するよりも、橘くんが否定してくれたほうがみんなも信じるはず。

そう思っていると、突然彼が私に視線を向けてきた。


私は目で訴え、首を横に振る。

そして念を送ると、橘くんはハッとして。
どうやら私の思いが伝わったようで、安心したのも束の間……。



「隠してたつもりなのに、もうバレてたなんて……恥ずかしいな」


どこか照れくさそうに。
伏せ目がちで話す橘くんに、クラスがまた騒がしくなる。

一方で私は呆然と立ち尽くすことしかできなくて。


橘くんは今、なんて……?

否定してくれると思っていたけれど、それは肯定に近い言葉だった。


「天音、本当におめでとう!
あたしも嬉しいよ!」

「……え」


高校2年の5月。

外の気温が暖かくなってきた頃に。

私の人生は大きく変わろうとしていた。