「ご、ごめんね姫野さん……!息苦しくなかった?
大丈夫!?」

本当に無意識だったようで。
恥ずかしかったけれど、平静を装う。


「だ、大丈夫で……あっ、大丈夫」


あぶない。
また敬語を使いそうになってしまう。

学習能力のない女だと呆れられるわけにはいかない。


顔の熱さを紛らわすため、両手でパタパタと仰いだ。
まさかあんな風に触れられるなんて。


「照れてる……かわいい、姫野さんの照れ顔を拝められて幸せだ……」

「て、照れてない、よ……!」


頑張って隠したつもりなのに、バレてしまって恥ずかしい。

きっと今の私は顔が真っ赤なことだろう。


「これからも俺の知らない姫野さんの顔、たくさん見せて欲しいな。姫野さんの彼氏として、もっと知っていきたい」


そんな私に対して、橘くんは真剣な顔つきへと変わる。

きっと恋人のフリをすると決めたからには、真面目にやり抜くつもりなのだ。


そんな橘くんの足を引っ張るわけにはいかないと思い、私も決心して何度もうなずいた。