「そういえば、姫野さんの好きな飲み物ってなにかな」
「好きな……飲み物」
「これから数え切れないほど家に上がってもらうだようし、姫野さんの好きなものをそろえておかないと」
「え、いや……私はもう決して橘くんの家にお邪魔しないので気を遣わないで下さい……!」
むしろ今日もお邪魔させてしまい、申し訳ない。
けれど私の言葉を聞いた橘くんが、石のように固まってしまった。
「橘くん……?」
本当に先ほどから様子が変だ。
もしかして熱でもあるのだろうか。
けれど橘くんに触るほど失礼なことはできないため、額に手を伸ばすことはグッと我慢する。



