「あ、あの橘くん……!」
そんな彼の名前を呼ぶことができたのは、正門を通って学校外に出たときだった。
その間、何人もの人たちから視線を向けられてしまった。
今もまだ、動悸がおさまらない。
「どうしたの?」
「あの、手が……」
「手が、どうしたの?」
もしかして無意識に手をつないでいるのだろうか。
目を丸くして私を見つめられる。
「ご、誤解されると思うので、離したほうがいいかと思われます……!」
緊張のあまり、変な話し方になってしまう私。
けれど橘くんの驚いた表情は変わらず、笑われることはなかった。
「えっ、誤解されるために手をつなぐものだと思ってたんだけど……あれ」
「……へ?」
ふたりして、互いを見つめ合う。
どうやら私たちは、互いの考えを理解していなかったようで。



