もちろん橘くんとのデートでそんなことはできないけれど。
「……姫野さん?」
「ひゃ、はい……!」
明らかにスクリーンを見ることを放棄した私が気になったのだろうか、ついに橘くんに声をかけられてしまう。
「もしかして、こんなシーンは苦手?」
「あっ、えっと……その、は、恥ずかしくて……ごめんなさい、映画にしようって言ったのは私なのに」
「気にしなくていいよ。
恥ずかしいなら、俺のほうを向いておけばいいんだ」
橘くんはそう言ったかと思うと、私の後頭部に手を回して。
そのままゆっくりと顔を近づけてきた。
突然のことで頭が追いつかないうちに、額をくっつけられ、橘くんの顔がすぐ目の前にあった。
「……っ」
あまりの近さに言葉が出なくなり、頬が熱を帯びる中で視線を下へと移す。



