彼がカードを取り出して玄関の前の機械にかざすと、
ピッと電子音がして扉が開いた。
開いた瞬間、
「っわーお、広い」と思わず声を漏らしてしまった。
「さぁ、入って」と微笑んでくれる彼に続いて「お邪魔します」と言いながら入室。
なんかもう玄関からすっごい広々してて、
ここから見えるだけでもすごい数の部屋がある。
白で統一されたこの空間は、
とてもとても眩しくて、
何だか、少し息苦しい。
それから彼は家の中を説明してくれた。
2つずつあるトイレにお風呂に、煌びやかな洗面台、キッチンは使われている形跡はあまりにもないけど確かに広々。
たくさんある部屋の扉も、
「仕事で使ったりするんだ、気になるなら見る?」
と言ってくれたけれど、何だかそこまで踏み込むのは失礼な気がして遠慮した。
そして…彼は、わざわざ私専用の部屋まで与えてくれた。
限りなく白かったその家の中とはまるで別世界みたいな、漆黒の部屋。
全てが黒い。カーテンも机もベッドも。
まるで私のためにあるかのような、息のしやすい部屋だった。
…明日出て行く予定の人間に、何故部屋を?
もしかして、1週間くらいいて良いとか言ってくれたりして。



