私のその言葉に、
どうやら葛藤しているらしい彼の、
決心と同時に扉の鍵は開いた。
恐る恐る玄関を開けて、
本当に久しぶりに、
ヒカリさんに会った。
美しい金髪は前より少し長くなっていて、それすらも似合っている。
完璧なルックスの、
その内面にある不安定な愛情が愛しい。
私と目が合って困ったように立ち止まる彼に、
…私は、意を決して"12年ぶり"に彼の名前を呼んだ。
「光貴くん」
私の口が、こうき、と動いた瞬間に、
彼は今までで1番驚いた顔をして、
「…なんで…」と言葉をもらした。
そして、私は"あの日"と同じ言葉を、
微笑みながら、
そして、泣きながら言った。
「……私、光貴くんにアイドルになってほしい」
「だって、そうしたらピカピカ光って」
「みかげのヒカリになるから!」
私の言葉に、とうとう光貴くんも耐えきれずに涙を流し始めた。
…私たちは確かに夜の公園で初めて出逢った。
…今から12年前。
泣いて、もう俯いて顔を手で覆っている彼の側まで寄って、
初めて、私から彼を抱きしめた。
「…光貴くん、全部思い出したよ」
「アイドルになってくれてありがとう」
そう私が言うと、
彼は、何度も何度も「ごめん」と呟く。