ガチャリと扉が開いてやってきた、
「…大河……」
彼の存在が、私を元いた世界に引き戻した。
彼の名前と共に、
正常な脳が丸ごと戻ってきた感覚になる。
大河はヒカリさんを心配するような視線を向けるけれど、
ヒカリさんは依然として顔を上げず俯いている。
「…行こうか」
そう言う大河に、「…うん」と頷いて彼の後ろに続く。
それから大河の運転する車に乗せてもらって、彼の家に向かった。
私とヒカリさんは1ヶ月近く2人だけで、
あの家で、そして大半をあの純白の部屋で過ごしていたらしい。
「…本当にヒカリ先輩は俺にとって憧れなんだよ」
「だから、あんたは本当に辛い思いをしたと思うけど」
「先輩のこと責めたりは、出来ない」
そう言う大河は、
初めてテレビで見たときみたいなチャラい雰囲気なんて何もない。
「…うん」
それから着いた場所は、これまたとっても高いマンション。
そこにお邪魔させてもらって、
すぐに大河が慌てたように、
「待って、女の人の服とか何にもない」
「……買い物行くか」
と言ってくれたので、近くのショッピングモールに連れて行ってくれることになった。
再び彼の車に乗っている間に、
「…思ったんだけど、ヒカリさんも大河も私といたりして…こう週刊誌的なの大丈夫なの?」
と、普通に心配になる。
そんな私の切実な心配を大河は軽く笑い飛ばして、
「ヒカリ先輩が事務所トップ、俺がNo.2。上に行けば行くほど事務所に守ってもらえるから」
「…つっても変装はするけど」
そう言って、彼はサングラスとマスクを見せつけてきた。
それに私が笑ったときに、
「あ、でもヒカリ先輩は今ずっと活動休止してるし、影響出てるかもな…」
「先輩、美影さんのためにトップまで登り詰めたし…」
…と言う彼に、
あれ?と疑問が生まれた。
「なんで私と会ったときにはトップだったのに、私のために、ってなるの?」