私が目を覚まして、
ぼんやりする頭をゆっくりと覚醒させながら、
瞳でヒカリさんを捉えたと同時に、
…この世界に、久しぶりに私たち以外の音が生まれた。
鳴り響いたチャイムは、
この家への来訪者がいることを表している。
その音を聞いてインターフォンの確認に行ったヒカリさん。
無意識に、そのあとを追うようについていく私。
『…先輩、もうやめましょう』
『大切な人を閉じ込めて楽しいですか』
聞き覚えのある人の声だ。
ヒカリさんから私を守ってくれた…、
…ヒカリさん以外の単語が、あんまり出てこないから名前を思い出せないな。
インターフォンのところから聞こえてくるその言葉を聞いて、
立ち尽くしているヒカリさん。
尚も来訪者は、ヒカリさんに語りかける。
『俺の憧れの先輩が、今は人としてしちゃいけないことしてる…』
『先輩は、美影さんを不幸にしたいわけないですよね?』
ヒカリさんの目を覚ますかのように、
半ば祈るように言うその人の言葉に、
ヒカリさんは、
泣きながら、その瞳に強く後悔を浮かべながら、
『……大河、お願いだ。』
『美影ちゃんを僕から…遠くに…』
最後には言葉にならずに、
ヒカリさんはそのまま蹲み込んで、
…もう、顔を上げることはなくて。