その瞬間に目を見開いた彼は、
「大河、早く美影ちゃん返して?」
そう言い始めた。
さっきまで少しも表情を崩さずにいたのに、
何故だか、焦りが見える。
「無理です、この子に何するつもりですか」
恐らく睨み付けているであろう大河に、
ヒカリさんは、
「…お前、ふざけるのやめてよ」
「僕にはその子が必要なの」
そう冷たく、
それでいてどこか感情的に言う。
いつだってあたたかく微笑んでいるこの人が、
どうして、こんな冷たい顔してる…?
そんなショックは、
次の一言で衝撃に変わった。
冷たげな表情をしていたヒカリさんは、
見たこともない、
不敵な、人を嘲るみたいな顔で口角を上げ、
「……お前を殺せば、美影ちゃんは帰ってくるかなぁ」
そう言いながら、
勢いよく大河の胸倉を掴んだ。
「…嘘」
思わず私が声を出してしまったのも仕方ないと思う。
ヒカリさんは力強い眼光で大河を睨み付けながら、
ギリギリとその腕と手に力を込めて、
大河の首元を締め付けている。
こんなにも、明らかな殺意を持っている人の瞳を、
初めて見た。
「早く返せよ!!早く!!」
優しい、優しい声で話してくれるヒカリさんは、
もうここにはいない。
「……やめて、やめて!!帰るから、ヒカリさんと帰るから…」



