トコトコと歩く。
記憶の片隅にあるネットカフェへの行き方を思い出して、
ひたすらに歩く。
歩いているうちにだんだんと日が落ちてきて、
居心地の良い暗い静寂が辺りを包んだとき、
ふと、誰かに話しかけられた。
「…あんた、瀧上美影ってやつ?」
私の顔を見てそう聞いてきたのは、
帽子やマスクで顔が隠れていて分からないけど、
どうやら若い男の人らしかった。
…どうして私の名前を知っているんだろう。
そんな疑問はすごく合ったけれど、
別に、気にしないでおこう。
そう思って無視して歩き出すと、
「…ヒカリ先輩と住んでるんだろ?」
…そこまで知られていちゃ、無視できないじゃないか。
私は歩き出そうとした足を止めて、
その人を半ば睨みながら、
「…誰ですか」
と聞いた。
そう聞くと彼は一瞬マスクを外してくれて、
そして見た素顔は…。
…最近番組で見た、ヒカリさんの後輩の…。
「俺、同じ事務所の後輩の大河って言うんだけど。」
そうだ、あの黒髪のチャラそうな人だ。
画面越しに見ていた人が目の前にいると変な感じがする。
…ヒカリさんも、画面の奥の人なんだけど。
「ここじゃ一目につく。路地裏に入るぞ。」
そう言われ、近くの路地裏に入った私達。