「…なんで、家にいないの」
おかしい、おかしい。
今日の生放送のリハーサルが終わってからの休憩時間、
今必死にスマホで、家に取り付けているカメラの映像を見ているのに
「美影ちゃんが、いない」
もしかして、
前のときみたいに外に出て行ったのか?
急いで録画してある映像全てを遡っていると、
どうやら、彼女は一度帰ってきているみたいだ。
…そして、
荷物を持って、
明らかに置き手紙をして出て行った。
その事実に気づいた途端に、僕は息苦しくなってきたのを感じる。
…彼女は、自ら望んで僕から離れることを選択した。
その酷く分かり易い現実は僕を痛めつけるのに十分だった。
…どうして?
君に選ばれるために、僕はアイドルになった。
君の親に大金を払って、17歳の誕生日に彼女を手放すよう約束させた。
お金だって物だって全てを彼女に捧げても構わないというのに。
彼女の幸せを願うなら、僕はここで彼女を諦めるべきなんだろうな。
…それでも、
美影ちゃんが僕以外の男と微笑み合って生きていくなんて、
…だめだ、想像しただけで気が狂う。
僕はすぐにスマホで彼女のGPSを追って、
居場所を突き止める。
…どうやら彼女は今歩いてるらしい。
ここから遠い場所にいるな。
僕は急いで出て行って、
近くにいたマネージャーに、
「…すみません、今日の放送出れないです」
と告げる。
もちろんマネージャーはすぐに怒って、
「何言ってるんだ、だめに決まってる」
そう言われる。



