次の日の朝。
今日は生放送もあるからか仕事がたくさんらしく、
珍しく朝早く出て行く彼を見送ろうとしていたとき。
彼はマスクをしながら不意にこちらを振り向いて、
「…美影ちゃん、学校から帰ってきたらちゃんと家にいてね」
そう、何かを見透かしているかのように言われた。
内心、とんでも無くびっくりしたけれど、
私は平静を装って、
「当たり前ですよヒカリさん、お仕事頑張ってくださいね!」
と言って、笑った。
今日はそんな私を見て、
微笑みを返すこともなく、
彼は仕事に行った。
…それじゃあ私は、最後の学校に行こうかな。
いつも通り制服に着替えて、
いつも通り学校に向かう。
そして、いつも通り授業を受けながらも、考えるのはこれからどうするかということ。
私には頼れる保護者もいないし、
ヒカリさんの家に来てからは金銭面は彼に頼りっぱなしだったから、
現実問題お金が心配だ。
…待って、私、ヒカリさんにとんでもなくお世話になってない?
お礼もせず、
勝手にいなくなるなんてあまりにも最低じゃないか…。
…でも、家を出ること。
これはもう私を保つには必要不可欠で。
いつか、いつか必ずこれまでの感謝は彼に返したい。
そう思いながら彼を離れるのはきっと正しいことではないだろうけど、
…必ず、
生きているうちに彼にお礼できることを願って、離れさせてほしい。
遠く離れた場所まで行って、毎日バイトをしようか。
ネットカフェかなんかに、
残っている母(もはや母でもないけどね)からのお金を使って寝泊まりして…。