今日は平日だから、
私が9時くらいに戻ってきても、もちろん彼が帰ってきているはずもなく、
私が夜に家を出ていたことなんてバレるはずがない。
私は家に帰って、お風呂に入ってご飯を食べて。
なんだかもう寝たい気分。
…現実から、目を背けてしまいたい。
私は誰もいない空間に「…おやすみなさい」と呟いて、
ベッドに潜って、すぐに眠りに落ちた。
…そう、眠りに落ちた彼女には気付けない。
仕事から帰ってきた美しい王子は、
愛しい姫の寝顔を見つめながら、
『…どうして、逃げようとする?』
そう、焦燥と苦悩の間で繋ぎとめ方を必死に考える、彼の絶望に。
彼女は、何も知らない。
彼は、全てを知っているということ。
姫の首元に光る黒い光は、
……美しいものじゃない。



