あぁ、私は幸福にはなれない人間なのだと。
不幸でないと、自分を保てない人間なのだと嫌と言うほど痛感する。
恋人でも何でもない、もちろんなれるほどの魅力もない私に、
彼のそばにいられる理由なんてない。
彼にとっての私という存在意義、肩書きすら持ち合わせていないし。
…せいぜい、居候といったところだ。
いつか、今の幸せな日々は終わる。
じゃあ、今度は私の手で終わらせたい。
私は初めて夜、1人で外に出た。
彼の家に初めてきた日から3週間くらいが経って、
そろそろ夏本番が近づいてきた今日の夜は
新鮮で澄み切った心地よい空気。
正直、まだ今すぐ家を出る決心はついていないけれど、
今はなんだか夜の暗さに直接触れたかった。
勉強したりして過ごしていたけど、
なんだか、息苦しさが消えなくて。
自分は死にたいのか?何をしたいのか?
そんなことは分からない。
あてもなくふらふらと歩く。
学校に向かう方向とは真逆、
あまり馴染みのない街並み。
ふと見上げた真っ黒の空に浮かぶ三日月はあまりにも美しくて、
美しくて…。
彼からもらった、
黒く光る三日月のネックレスを首元から取り出して、見つめる。
そのネックレスは、私の全てを見透かしているみたいに今日も綺麗に輝いていて。
なんだかたくさんのことを考え過ぎて疲れてきたから、
今日のところは、もう帰ろうか。
そう思って、家の方向に歩きだした。