目を見開いた土方さんが振り返る。
ミーンミーン、チリチリチリ───…。
初夏特有の、そんな自然の音。
「…ほう。誰が、格好良いって?」
もう1回言えと、そう言うように彼は意地悪な笑みをこぼした。
え…、もしかして声に出てた…!?
あたふたする私を満足気に見つめ、手を握る力が加わった。
「帰ったらもう1回言えよ今の」
「…どうして帰ったらなの…?」
「別にここでも俺ぁ構わねえが。お前、いつも恥ずかしがってんだろ」
なにを……?
すると土方さんは当たり前のように顔を寄せてくるものだから。
唇と唇が重なる数秒前、思わずその間に片手を挟んだ。
「───ほらな」
彼は微笑むと、代わりと言うように額にちゅっと口付けた。
そう、これなのだ。
土方さんは変わった、とても変わった。
それでも、もしかしたらこれが本当の姿なんかじゃないかとも思ってしまう。