ただ、腹が立って仕方ない。
なにが嬉しくて他の男からもらった紅を付けた嫁に出迎えて欲しいっつうんだよ。
「こんなこと…初めてだ」
昔は当たり前のように何人もの女と関係を持って、それでいてだらしがなかった俺は簡単にそんなものは切れた。
例え他の男が居る女に騙されていたとしても、全然なにも思わなかったのだ。
俺も同じくらい好き勝手していたから。
「土方さん、」
襖の先、ゆらりと幽霊のように立つ女は俺にゆっくり近付いてくる。
ふらふらと足がおぼつかないまま俺の手を掴むと、敷かれた布団の上に体ごと押し倒した。
「…なにしやがんだ」
様子がおかしい。
つうか……酒臭ぇ。
「呑んだなこいつ…」
明らかに俺以上に下戸じゃねえか。
目の焦点も合ってない、呂律も回っていない。
「綺麗な人が、好き?」
それは唐突に震える声で言ってきた。
「大人で魅力的な人の方がいい…?」
「…なんの話だ」
「どうして…私を選んでくれたの?」



