こんなにも静かな食事はずっとずっと前だったから。
自分が施設の出だということを思い出したくらい、静か。
打ち解けることも出来ず、無愛想で滅多に話さないから保母さん達にも距離を置かれていたっけ…。
そんな子供だった幼い私は今、この人に嫌われてしまうことを一番に恐れている。
「と、歳三さん…味は大丈夫…?」
こんなときに限って名前で呼ぶ私を一瞬見つめ、「あぁ」と言う。
たったそれだけ。
この重い空気の中、他に何を話せばいいのだろう。
どうして似合わないなんて意地悪を言うの───…?
頭の中はそれでいっぱいだった。
「ご馳走さん」
「もういいの…?」
「悪いが食欲なくてな」
まだたくさんあるのに。
こんなこと初めてだった、彼が好物の沢庵を残すなんて。
「あ、土方さん…」
スッと立ち上がると、そのまま寝室へ行ってしまった。



