ふと思い出したあるものに気付いて、引き出しから取り出す。
それは数日前に1人の男性から受け取ったものだった。
白く小ぶりな貝殻は、パカッと開いてみると赤い紅がぎっしり詰まっている。
「すごい、この時代は貝殻に入れるんだ…」
また新しい発見だった。
鏡台の前、だいぶ伸びた髪を見つめる。
くくり上げるように簪で緩くまとめられていて、その簪は彼から贈られた大切なもの。
「わぁ……」
こういうものを付けるのは初めてだった。
少し色褪せた浅葱色の首飾り、同じ色をした簪。
そして、赤い紅。
「なんか私…、女の人みたい…」
間違っていないのに、生まれたときから女のはずなのに。
それでもこの時代では男として生きた方が長い。
土方さん、なんて言うかな…。
綺麗って思ってくれるかな…。
言葉にしてくれなくても、思ってくれたならば十分なほどに嬉しい。



