どちらにせよ、とりあえず睨んでおく。



「「ひっ…!」」



俺がもし今、鬼の副長だったならてめえらは迷わず切腹だ。

命拾いしたな馬鹿共。



「怪我してますね…。ちょっと待っててください」



そんなことも知らず、梓は1人の男の頬の怪我を見つけると、入り口に置いてあるカゴへ向かった。

戻って来ると、迷わずその男の頬に消毒をした布を当てる。



「痛かったら言ってください」


「だ、大丈夫です…」



体が勝手に動いちまうんだろう。

戦場に居る頃は1日に何十人の怪我人を看ていたのだ。

来る日も来る日も血を見て、たくさんの命を見送ってきた。


近藤さん、あんたの“娘”はいい女になったよ。



「ありがとうございました…」


「あまりお水には濡らさず、出来れば布は毎日変えて菌が入らないようにすれば3日程で治ると思うので…」


「は、はい…」



明らかに梓の顔を見れないで赤くさせている、ひ弱そうな男。

耐えきれなったのか素早く立ち上がった瞬間。


───コトンッ。