『ん?どうしたんだい梓』
風呂敷に何かを詰めて、今にも屯所を出ていこうとしている山南 敬介。
総長であり文武両道な彼は人柄も優しく、周りのことを誰よりも考えている人。
土方さんとは正反対だと、山南さんの肩を持つ隊士の方が多かった。
沖田さんもよく山南さんと一緒に居ることが多い。
『あのね、チュン助の───』
『おっと悪いね。これから資金調達の大事な会合に向かわねばならないんだ』
ポンポンと私の頭を叩いて『帰ったらすぐに聞くよ』と、落として去ってゆく。
やはり山南さんは優しい人だと思った。
そうなってしまえば───残るはただ1人。
『あ、あの……』
微かに開いていた隙間の先、静かに座っていた青年は分厚い冊子を手にしていた。
そこに目を落とす姿に邪魔をしてはいけないと、即座に判断した───が。
『…どうかしたのか』
去ろうとした背中を引き留めてくれたのは、その人の声。
『ちゅ、チュン助の……』
『チュン助……あぁ、それがどうした』
言葉で紡げない私。
一生懸命伝えたいのに、ぐっと飲み込んでしまいそうになる。
『…ご飯……作れなくて…、』



