「ご無沙汰しております、副長」


「ったく、気楽にしてくれ。俺はもう副長でも指揮官でも武士でもねえんだからよ」


「俺も今は山口という姓です。…しかし驚きました、まさか梓の姉と共に暮らしているとは」



きょとんと目を丸くさせた土方さんは、お茶を出した私を一瞬鋭い視線で見つめた。

そんなものに気づかないふりをして湯気の上がる玄米茶をそれぞれに差し出す。



「副長の大切な女性であれば、その弟である梓を局長も総司も可愛がるわけです」


「…まぁな」



なんとか乗りきったらしい。

斎藤さんは凄腕の剣豪で、土方さんからの信頼が熱い1人だったけれど、どこか鈍感なところがあった。


そんな中、空気を変えるように土方さんは斎藤さんを見つめた。



「お前は相変わらず剣を手放してねえんだな」


「俺は今、会津若松で警官として働いています。武士とはかけ離れた道で妻もいて……子供がもうすぐ1人産まれるんです」


「子供…!?」



反応してしまったのは私。

まさか斎藤さんが結婚までしてて、子供も産まれるなんて……。


だって最年少幹部の1人だったのに。


でも今の本当の私を知ったら、斎藤さんはもっともっと驚くことだ。