『僕と全部行こう』
伸ばした私の手。
同じように取ってくれる寸前、彼は苦しそうに咳き込んだ。
そしてビチャッと、地面に広がる真っ赤な血。
それは一瞬にして血の海と化する。
『ゴホッ…!!ゴホッ……苦しい、梓……っ、助けて、』
待ってて沖田さん。
薬……、薬とお水をすぐに持ってくるから。
『効かないよ……そんなの、』
そんなことない。
毎日飲んでれば、きっと労咳は治るはずだよ。
『あぁ、そうだ……未来から持って来ればいいんだよ…、未来では治るんでしょ…?』
私は……未来の人だから。
そのお薬を持ってくれば、あなたは死ななかった。
それなのにどうして立ち止まって見つめ続けることしか出来ないんだろう。
『なんで、持ってきてくれないの……、それくらいしか君の存在価値はないだろ……』
それも、分かっている。
でもそれすらも出来ない私は、苦しむ大切な人の手を握ることしか出来なくて。
いつも助けてもらっていたのに何ひとつ恩返しも出来ない。