パシッと手を払った土方さん。
さすがにあの手紙を読んだあとだからこそ尚更複雑で、背中に悪寒が走った。
見るからに80歳は越えているだろう。
孫を愛でるような気持ちならば彼も許したかもしれないけど、私に恋をしてしまったと書いてあったのだ。
「…てめえ、狙って来ただろ」
「な、なんのことか分かりませんな」
「こんな雨の日に出かける老人が居るか。俺の目を誤魔化せると思うな」
明らかに動揺している老人は、目が泳ぐ中でぷるぷると震えつつもお茶を啜った。
それでも今日は泊まってもらうしか無さそう。
離れた客間に案内するとして。
「私は脚が悪くてね、付きっきりの看病が必要なんだ」
「ほう?脚の悪いジジイが良くこんな山手に来れたこったな。その馬鹿な下心だけは褒めてやるぜ」
土方さんの最大の皮肉めいた返答に、お爺さんは言葉に詰まった。
「だから言ったろ。俺の勘は当たるんだよ」
「…うん」
こんな人だったんだ……。
あのときは人の良さそうなお爺さんだったのに、やっぱり見た目だけじゃ分からないなぁ。
「ろ、老人には優しくしろと親に教わらなかったか!」
「うるせえ。てめえみたいなジジイの介護をなぜ俺達がしなけりゃならねえんだ」



