だんだんと日は暮れてくる。

商店街から眺めた海は、キラキラと輝いていて。

少年は立ち止まってその先を見つめた。



「───…」



あの先には何があるんだろう?

手に握りしめていた1つの青い玉を、その海にかざしてみる。



「うわぁ、きれい」



母が大好きな色。

そして、この玉も母から渡された宝物だった。


“びいだま”、そう言うらしい。



「あっ…!」



コトンッ、コロコロコロ───…。


そんな母の宝物を落としてしまい、転がってしまえば。

お魚が入ったカゴを掴んでいた手はパッと離して、反射的にそれを追いかけてしまう。



「まてっ!おい!とまれ!」



それでも止まってくれない。

まるで追いかけっこ、幼い少年はおぼつかない足取りで追いかけた。



「鬼がくるだろっ!かあちゃん泣かせたらとうちゃんが出てくるんだ…!とまれっ」



そんなびいだまはコロコロ転がって、1つの下駄の前に止まった。



「鬼、参上」



低い声、今にも落ちてきそうなため息。

見慣れた姿に少年の瞳はだんだんと揺れた。