「明日、すぐに近所の産婆んとこ行くぞ」
なにを言っているのか未だに追い付けない。
産婆…そうだ、このご近所さんの中には有難いことに3人も産婆がいる。
だからこそ「身籠ったらすぐ知らせな」と、しょっちゅう言われては顔を赤くさせていた。
「俺達の家族が、また増えるんだ」
そんなのまだまだずっとずっと先だと思っていたのに。
確かに彼にはお母さんになりたいとは言ったけど、まだまだ私は“母親”には遠いから。
きっとずっと先なんだろうなぁって。
でもいつかなれたらいいなぁって、そう思っていたのに。
こんなにも近くにあったなんて。
「────……」
そっと自分のお腹に掌を重ねてみる。
カタカタ震える自分の手、それは赤子を初めて腕に抱いたときに似ていた。
壊してしまいそうで、とてもとても怖かった。
小さき命を前にして、どう触れたらいいかすらも分からなくて。
『大丈夫だ。心配要らねえよ』
『お前なら出来る』
『俺が支えといてやる。お前は赤子を救うことだけを考えろ』
そう言って、震える手を包み込んでくれた人。
今も彼は私の前にいる。



