「体も熱くて微熱が続いてたの…!そしたら今吐き気がして…っ」
「…でも咳は出てないんだろ?」
「うんっ、でもこれからきっと出ちゃうから…っ」
どうしよう、どうしよう。
そう言って泣く私とは反対に、彼は意外にも冷静に何かを考えていた。
「労咳は吐き気はねえぞ」
そう呟いて。
思わずピタリと一瞬涙が止まるけれど、再びじわっと溢れてしまう。
「じゃあ違う病気なんだ…っ」
この時代は病気になってしまえば治る可能性は低く、そのまま死へ向かってゆくことがほとんど。
「やだ…、まだここに居たい…っ」
彼はゆっくり体を離し、そんな私を見つめてくる。
その表情は歓喜や期待に溢れた愛しいものを見る眼差しで。
どうしてそんな顔をしているの…?
「ふっ、くくっ…あははっ!」
場違いなくらいに吹き出した笑い声。
「ど、どうして笑うの…?」
この人はこういう笑い方をするんだ、こんな声を出すんだ。
こんなふうに笑える人だったんだ…。
そんなものが見れて嬉しいのに、それでもこの先の未来を考えるとやっぱり涙が止まらない。



