ジロジロ見られる視線から今すぐにでも隠れてしまいたかった。

春が来て、どこからか桜の花びらがヒラヒラ落ちてくる。


───そんな季節。


夕暮れ前の商店街、未だに人で賑わうそんな場所を、私はカラカラ下駄を鳴らせて小走り。



『巧者の化粧師さんが無料でお化粧してくれるんですって!』


『梓ちゃんもたまにはこういうの経験しなきゃ!』



近所の奥様方に半ば強引に連れられた場所は1つの茶室。



「どうしよう、歳三さんびっくりしちゃう…」



連れられるがまま、されるがまま気付けばこんな姿に。

家路を辿る私の身なりは、いつも通りの淡い黄色をした着物なのだけど…。



「梓ちゃんどうしたんだい!すっごく綺麗だよ!」


「あ、ありがとうございます…」



それでも普段と違うこと、それはチラチラと通りすぎる人が見つめてくることだ。

いつもお世話になってる八百屋さんやお魚屋さんの店主だって、目をキラキラさせて話しかけてくれる。